section02:
安藤プロが亡くなったことが、去年、一番ショックだったこと(来生)
小松:プロの人って、やっぱり振らないんですか?
梶本:いや、振ります(笑)。
片山:昔は、振り込まないことが麻雀の強さだっていう価値感があったんですけど、今は全然違うんですよ。むしろ、当たり牌じゃない牌を止めて降りちゃうことの方が格好悪いっていうふうになってきたんですよ。業界の価値観として。
小松:そうなんですか。
片山:行かなきゃいけない時に行けないのは、もうプロじゃないんですよ。攻撃力重視。
来生:やっていると、流れってあるじゃない?今、デジタル派っていうのと、アナログっていうか……流れとか、そういうものを非常に重視するタイプがあって。わりとベテランの人は、アナログ派だよね。今の若い人の中には、デジタル派って言って、ツキとか流れとか、あまり関係ないっていう、確率を重視するタイプがいる。僕なんかは、本当に流れってあるような気がするだけどね、デジタル派の方が、精神的には楽なんじゃないかと。
梶本:アナログの方が、確かに精神的な起伏はありますけど、「ダメなら次はこうしてやろう」とか、色々と道はあるんです。僕は、とりあえず、そういう“運”みたいなものがあったほうが面白いな、色々と楽しめるな、と思っているんですけど。実は、MONDO21では、あまりそういうことを言わないようにしているんです。やっぱりね、普通のことだけを言っている方が、見ている人は安心じゃないですか。ある意味、考え方を押し付けるみたいになっちゃうんで。運があるとか、ないとか、ここはダメだとか、あんまり言っちゃうと、見ている人に対して押し付けになっちゃう。起こっている現象だけ、普通に言ってあげるほうが……見ている人は見ている人なりの楽しみ方があっていい、というふうに思うんですけど。
来生:漫画家の福地抱介さんも麻雀が好きでさ。
片山:名人取られましたよね?
来生:そうそう。雀友に吉行淳之介さんや芸能人もいて。麻雀エッセイとか、何冊か本も出しているけど。彼が、「『他のことは何をやってもダメだが、麻雀だけはたいしたものだ』という話は聞いたことがない。麻雀っていうのは、集中力、注意力、判断力、精神力、そして勘。この5つが強いヤツが強いんだ。そういうヤツは、他のことをやっても強い」と、そんなことを言っていた。これは結構、言い得ているなと思った。麻雀って、他の3人の手や牌山がわからないわけだよね。自分の手牌だけがわかっている。捨て牌と全体を見ながら、色々と注意を払って手牌を作っていくでしょ。もちろん、確率も考える。そうすると、全部、当てはまるんだよね。この5つっていうのが。メンタル面で失敗しちゃうこともあるし。弱気になってダメだっていうことがある。面白いのはね、僕は将棋もやるんだけど、将棋って強い人には勝てない。まず勝てない。プロとアマの差が一番激しいのは相撲だって言われているけど、次に将棋だって言われているよね。横綱の朝青龍と1000回相撲を取ったって、絶対に勝てないでしょ。これは確実だよね(笑)。
片山:二人がかりでも勝てないです(笑)。
来生:将棋もそう。プロの棋士と1000回やっても絶対に勝てない。
片山:10面落ちでも勝てませんね。
来生:明らかだよね。ただ、麻雀っていうのは……。
片山:来生さん、勝ちましたよね、今日(笑)。
来生:麻雀っていうのは、初心者でもプロに勝てる場合があるでしょ。結局は、ビギナーがちょうどツイていて、他の3人のめぐり合わせが悪いっていう状況だと、半チャン2回とか、馬鹿勝ちしちゃうことがある。それがね、すごく面白いなと。
片山:本当に、そこなんですよね。麻雀の面白さって。
来生:巡り合わせが毎回違うし。ちょうど巡り合わせが良くて勝っちゃうってこともありえる。ただ、長くやると絶対にダメだよね。
梶本:よくゴルフに似たゲーム性だとか、言われますね。ボウリングもそうかもしれないです。一回の勝負だと、その時の運、不運がありますし。
片山:ゴルフでも、プロとやって、アマチュアがホール・イン・ワンしちゃう時もありますよね。
梶本:18ホール回っていると、わからないけど。
片山:麻雀の場合は、半チャン何回だったら、プロがアマチュアに絶対に負けないかな?100回以上だったらどうかな。
来生:例えば、同レベルの人……ベテランの森山プロと伊藤プロと土田プロと金子プロ、この4人が毎日半チャン4回やって、1年間続けたら差は出てくる?
梶本:出ると思いますよ。
片山:その4人だと差が出るな(笑)。
来生:そこで勝った人が、やっぱり強いってことになるの?
梶本:それはもう、明らかに強いです。
来生:1カ月に1回なり、1週間に1回だとわからないじゃない。ちょうど、たまたまその日はツイてたけどって。
梶本:MONDO21では1日に5回録るんですけど、そうすると、その日にツイている人っていうのは、本当にあるよね。これは、不思議なもので。
来生:ツキってどう思う?不思議だと思うんだけど。ツキの法則があるとしたら、それを発見した人はノーベル賞級だろうね。
梶本:ツキって、相対的なものだと思うんですよ。人と比べてツイてるか、ツイていないかっていう、4人の中での関係だと。
来生:場が変わっても、その日はすごく良かったり。じゃあ、次の日も同じかっていうと、そうじゃない。
梶本:色々なパターンがありますよね。例えば固定の面子で何回もやっている時は、それがわりと見えやすい。ツカないヤツは、どんどんツカなくなって。でも、相手が変わったり、場所が変わったりすると、もうわからないですよ。半チャンの中で勝負するしかないですから。
来生:結局、プロ同士でやっていても、誰かがトップになって、誰かが最下位になるわけだよね。最下位になった人が下手なわけじゃない。じゃあ、結局、何だったのかって言うと、ツイてなかったんじゃないかと。で、勝った人は、たまたまめぐり合わせが良くて、ツイてたってことだよね。
梶本:そうですね。だけど、やっぱりそういうツキを活かしきるだけの技量がないと。
片山:ツイているっていうのは、ツイた状態を、なるべく長く維持することができる技術があるか、ないかだと思うんですよ。
来生:それはプロになれば、みんなわかるんじゃないかな?
片山:さっき言われたようなデジタルな人は、そういうふうには考えませんけど、アナログの人は考えますね。悪い時に、どれだけ失点を減らすかって考える。どれだけ我慢できるか、どうやって切り抜けるか。結局は、誰だって波はあるわけで、上に行った波を大きく長く、下に行った波を小さく短くするっていう。麻雀の強さって、この操作の違いだと思うんですよ。強い人は、下の波を抑えられますね。
梶本:そうですね。
片山:そんなに負け続けることはない。
梶本:亡くなってしまいましたけど、安藤満さんとかは……。
片山:そうですね。安定して強かった。
来生:安藤プロって言えば、去年の正月の「バトル・ロイヤル」の時に、病欠だったよね。「どうしたんだろう」って思って、インターネットで調べたら、3月に亡くなったって。去年、一番ショックだったことだな、そのことが。僕は、安藤プロと土田プロの麻雀が面白いなと思っていたんだよ。
片山:あの二人は、絶対に面白いですよ。
来生:今、安藤プロのメモリアルをやっているじゃない。寂しくなっちゃったね。やっぱり、あの人は強かったよね。
片山:強かったですよ。プロで誰が強いかって聞かれたら、僕は迷わず安藤さんって答えます。
来生:「亜空間殺法」ね。
片山:あれは、本当に面白いですよね。ツカない人って、普通は我慢して、相手のエラーを待とうと思うんですけど、無理やり相手の足を引っ張って「チャンネルを変えちゃえ」っていう。それが出来るっていうのは、勇気があるよね。
梶本:普通にやっていても、ツキの差があるっていうことは、スタート時点で差がある駆けっこをやっているみたいなものじゃないですか。普通にやっても、明らかにゴールするのは向こうの方が先なんですよ。そこを、「じゃあ、前向きに走るヤツを後ろ向きに走るように変えちゃおう」みたいな。競技自体を変えちゃう。
片山:結構、「一か八か」的なところはあるよね。
梶本:ギャンブルだと思う。
片山:でも、しないよりマシ。このまま、ずっと負けるよりも。