デビュー30周年 オフィシャルサイト特別企画第2回 将棋

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section03:
12歳で奨励会に入って、初めて挫折感を味わいました(島)
来生:一昔前ですと、将棋で生活しているっていうことが、一般的には理解されていなかったんですけど。
島:将棋のプロがいるっていっても、その収入がどこから入るのか、わからない人も多いでしょうね。
小松:テレビなんかでやっているトーナメントは、賞金があるんですか?
島:そうですね。賞金とか、対局料とか。
来生:島さんは竜王の初代ですよね?
島:そうですね。
来生:17年ぐらい前に、「竜王位」っていう新しいタイトルが出来て。それが当時、一番賞金が高かったんですよね。
島:当時は2,600万円でした。
来生:その第1期で……。
島:その時は、たまたま取れたんですけど。
来生:貯金したんですか?(笑)
島:それがですね……。
来生:全部、使っちゃった?
島:今でしたら、もっと堅実に考えたと思うんですけど、若気の至りで。
小松:いくつの時だったんですか?
島:26歳の時ですね。
来生:島さん、当時、結構話題になっていたんですよね。六段で竜王を取って。しかも、アルマーニを着ていた。
島:洋服と靴を買うのが趣味だったんですよ。竜王戦の賞金は、スーツと靴と車を1台買って、なくなりました。
来生:プロ棋士で、ファッションにまでこだわっていて、異彩を放った存在でしたよね。
島:タイトル戦は、普通、和服ですからね。その時に、スーツを着て来ると、当然、先輩社会から摩擦が起こるわけです。「なんだ、こいつは」ということで。もし今、僕のような人が出てきたら、僕も「なんだ、こいつは」って思いますからね(笑)。
来生:でも、今は普通でしょ? 背広姿って。
島:やはり、タイトル戦は皆、和服です。
来生:タイトル戦以外は?
島:普通はスーツですね。
小松:2位、3位の賞金はどのくらいなんですか?
島:2位は、優勝賞金の30%という暗黙の了解があるんです。
小松:ゴルフなんかだと、だいたい半分になったりしますよね。
島:将棋は、ゴルフと相撲の世界と似ているんですけど、色々と違う部分もあって。例えば相撲ですと、幕内十両がお金のもらえるところですよね。で、定員制で月給を払って、その中で争っているわけです。ゴルフの場合はプロテストがあって、プロのライセンスは与えますけど、予選は皆、参加フィーを払って出てくる。将棋の場合、プロは1年間に4人って決まっているんです。ある種、定員制なんですね。そこは、相撲と似ています。
来生:四段になるのが4人っていうことですよね。
島:先ほど話しに出た奨励会は、相撲の幕下に当たります。
小松:何人ぐらいいるんですか?
島:奨励会は、今、100人ぐらい……150人ぐらいいるかな?
小松:定員が決まっているんですか?
島:定員はないけれど、試験があって、上に上がるのは4人と決まっているんです。年齢制限もあります。
来生:奨励会の中で勝って、順位が上がっていくんですよね。
島:そうです。奨励会の中にもレベルがありますので。まず、アマチュアの四段ぐらいの人が、奨励会の六級というところに入るんです。で、奨励会に入って、まず挫折感を味わうんですね。自分がいかに大したことのない、普通の人間かっていうことを、まず思い知らされる。僕は、12歳で奨励会に入って、初めて挫折感を味わいました。
小松:そのくらいの年齢が普通ですか?
島:そうですね。今では普通ですけど、その頃は、まだ15歳ぐらいが普通でした。僕は、結構、勉強が好きで、暗算に自信があったんです。中学に入った頃だったんですけど、2桁ぐらいの暗算だったら、軽くできた。将棋道場で、お金の計算とか、学校で習わないことを色々とやっていましたから、自然に伸びたんですね、そういう才能が。ところが、奨励会に入ったら、同期は皆、普通に3桁の掛け算が暗算で出来るんですよ。これには、たまげましたね。いかに自分が思いあがっていたかを思い知らされて。すごいカルチャーショックでしたね。
小松:やっぱり、普通じゃないんですか?
島:まあ、普通じゃないところがないと、そういったマニアの世界って言いますか……将棋が強くなるっていうことは、普通の人間に見えても、どこかやっぱり……良い意味で異常な部分がないと。ある時期に、皆、そういう異常な打ち込みをしていますよね。どんなにまともに見える棋士でも。奨励会の時に、そういうことを経験するのは大事なことだと思います。奨励会っていうのは、年齢制限があって、26歳までにプロにならないとダメなので。
来生:昔は30歳だったんですよね。今は26歳ですか。厳しいな。
島:まあ、その方が、他の世界への転身も効くだろうし。
来生: そうですね。30歳まで一生懸命、将棋一途で三段まで行って、そこから年齢で落とされちゃう、ダメになっちゃうっていうのは、悲しいですから。
島:20歳までに初段っていう内規もあるんです。普通、10代だったら誕生日を祝ったりするじゃないですか。でも、将棋の世界に入ると、誕生日が来るのが怖くてしょうがない。1年、1年、ろうそくの火が消えていくのと同じなんです。14〜15歳でも、自分が若いっていう感覚が全然ないんですよ、時間が限られているから。幸い、僕は17歳の時にプロになれたんですけど。
小松:四段から、プロっていうことですね?
島:そうですね。相撲で言えば十両の一番下の方に入って、給料も出る。
来生:C級の2組っていう順位になるんですよね。そこに何人ぐらいいるんですか?
島:今、50人ぐらいですね。
来生:で、年間、総当たりで戦って。
島:3人ぐらいが五段に上がります。
来生:それで、今度はC級の1組になる。で、また成績が良いと、B級の2組、B級の1組、最後がA級。A級は10人しかいないんですよね。
島:A級は10人で、名人が1人ですね。九段は名誉職みたいなもので、八段を長くやっていたり、実績があると九段になれます。
小松:そうすると、そのピラミッドの中の定員は決まっているわけですよね。
島:四段が50人、五段が30人、六段が25人、七段が13人、八段10人、名人が1人です。A級の優勝者が名人に挑戦するっていう感じですね。
小松:全部で100人ちょっとですか。
島:そうですね。リーグ戦参加棋士は100人ちょっとです。
来生:名人戦って、毎日新聞でしたっけ?
島:そうです。一回、朝日新聞に移ったんですけど、また毎日新聞に戻りました。
来生:僕は昔、将棋欄を、全部切り取っていましたよ。
島:我々も、勉強方法として、新聞の将棋欄を切り抜いて並べています。日々、勉強なんです。今年で棋士生活25年になるんですけど、それでもやっぱり、勉強をしないとついていけない。経験が活きない世界なんです。
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section02:小学生の頃、クラシックギターの教室に通っていたんです(島)