section07:
真似する気にならない戦法で勝つのが、一番、効率がいいですね(島)
来生:プロになれない人でも、将棋の教室を開いてもいいんですか?
椎名:ええ。将棋の教室を開くことに、まったく制限はありません。例えば私が将棋教室を開いても、まったくお咎めはないんです。習いたいという生徒さんがいるかどうかは別として(笑)。
来生:将棋連盟から免許とかっていうのは?
椎名:奨励会で初段以上になった方に準棋士という資格が生じて、その人には免状を発行権利はあるんですけど。将棋教室を開く分には、どなたが開かれてもいいんです。
島:僕は、世田谷で子供の教室とか大会をやっているんですけど、椎名さんにも必ず来ていただいて、将棋インストラクターとして、ご指導いただいています。
椎名:たまに、子供に教えられたりしますけど(笑)。
島:将棋の強さと教える力は、全然関係ないですね。プロの八段でも、教え方は全然ダメな人が多いですし。
来生:そうでしょうね。
島:羽生さんが、将棋教えるのがうまいとは、到底思えないですから。やっぱり、子供には、噛んで含めるように教えていかないといけませんからね。だから、勝つことしか考えていない現役プロは、結構、教えるのは下手ですよ。
来生:プロの方は、筋違い角戦法とかには、もう答えが出ちゃっているんですか?
島:いや、出ていないんですけど、なんとなく損だからやらないっていう人も多いですね。なんとなく、やりたくないっていうか。やっぱり、「こっちをやっても、4割5分ぐらいしか勝てないかな」と思ったら、選ばないですね。
来生:僕が熱中した頃は、居飛車とか、5三銀左だとか右だとか、位取りとか……矢倉でも、雀刺しとか、あったんですけど。何年か、ブランクがあって、久しぶりに将棋を見ていたら、矢倉でも今度は2六歩をつかないのにビックリしました。
島:そうですね。かなり改良されていますね。
来生:それから、居飛車の急戦を、ほとんどやらないですね。
島:そうですね。穴熊とか。
来生:居飛車穴熊とか、左美濃囲いとかが多くなって。割と、がっちり囲んだ……結局、5三銀だと勝率が悪いんですね。
島:うまくいかないことが増えたんでしょうね。やっぱり、勝率に敏感ですからね、指す方は。
来生:居飛車も穴熊が多いじゃないですか。昔は、居飛車の船囲いみたいな形でやっていたんだけど。最近は、腰掛け銀なんかも……。
島:使わない場合が多いですね。将棋も、戦術の進歩って、必ずしも駒が前進していないわけです。むしろ、駒が後退する場合もあるので。
来生:昔、升田幸三さん(故・升田幸三・実力制第4代名人)は、新手を探し求めるっていうか、研究していたけど、今はもう、そういうのはないですか?
島:新手って言っても、マイナー・チェンジですよね。明らかに根本から変えるっていうのは、何年に一回しか出て来ないんで。
来生:例えば、藤井システム(注:藤井猛九段が考案した振り飛車の戦法のひとつ)もそうだけど、筋違い角戦法みたいな、本当にアマチュアが好んでやりそうな……それを少し研究してね、プロを驚かすっていうか。
島:みんなが注目していない戦法を使う方がインパクトは大きいですね。まあ、宝の山が落ちている可能性もありますけど、多くはゴミだったりするので、難しいところなんですよ。
来生:内藤さんの空中戦法も……。
島:ちょっと形が変わっていますね。
来生:かなり変わっていますね。あのへんは、また研究し直しているんでしょうね。
島:そうですね。例えばメロディが美しければ、誰でも魅かれるところはあると思うんですけど、結構、真似されやすいところがあると思うんです。将棋の場合、いかにも悪そうな戦法だけど、意外に勝っているっていうのが一番良いんですよ。形が悪くて、「なんで勝っているんだろう」と思われているような、真似する気にならない戦法で勝つのが、一番、効率がいいですね。明らかに、「あ、これは」と思ったら、すぐに皆に真似されちゃいますから。将棋は特許がないので。