section08:
将棋の強さは、決断の良さと集中力のメリハリですね(島)
小松:将棋の歴史っていうのは、いつ頃から?
椎名:平安時代ぐらいに伝わったんじゃないかって言われているんですけど。定かではないんです。
来生:え? 平安時代?
椎名:平安時代ぐらいには、将棋の駒のようなものが出土されているらしいんです。平安時代には、まだ飛車と角がなかったみたいですよ。文献によると。
島:飛車、角がないと、つまらないですよね。
小松:今みたいなシステムが出来上がったのは、どのぐらい前なんですか?
島:結構、最近ですね。
椎名:江戸時代に、名人戦みたいなものが出来たんですけど、現在のような実力制の名人戦になったのは、結構、近年ですよ。
来生:システムが確立したのは戦後ですよね。
小松:戦後になってから、将棋を指して生活ができるっていうシステムが確立されたっていうことですか?
椎名:たぶん、戦前に実力制名人戦になっていました。升田先生とか大山先生は兵役に行かれていましたから。たぶん、戦争前にそういう時代になっていたと思います。
小松:女性の棋士の場合は、システムが違うんですか?
島:ちょっと違うんです。
坂東:養成機関もまったく別で、女性だけの育成会っていうところに入るんですけど。
小松:女性と男性が対局するっていうことは、ないんですか?
椎名:男性と同じところで棋士を目指す女性棋士も、何人かいらっしゃいます。女性に門戸を開いている男性棋界もあって、女性しか入れない女性棋界もあるんです。
来生:NHK杯は、女性も出られるんですよね?
椎名:そうですね。女流枠がひとつあります。
来生:女性とは、やりたくないでしょうね。
椎名:気持ち的には、多分、そうだと思います。強いですからね、清水さん(清水市代・女流三冠)も、中井さん(中井広恵・女流六段)も。
小松:女性棋士で強い方って、男性の中に入った場合、どのくらいの位置になるんですか?
島:C級2組ぐらいにはなるんじゃないかと。僕は、清水さんと、よく練習するんですよ。私の方が、勝率は良いんですけど、コースを間違えると打たれちゃいますね。彼女はホームラン・バッターなので、コースを間違えなければ大丈夫なんですけど、テレビ将棋の30秒将棋とかで、ちょっと失投するとホームランを打たれちゃいますね。怖いですよ、やっぱり。
来生:結局、強いっていうのは、どれだけ深く読めるかっていうことですかね。
島:それもありますし……色んな要素がありますね。あまり根を詰めても、うまくいかないこともあります。読んでいる量だけで、勝てるわけではないみたいですね。やっぱり、決断の良さであるとか、集中力のメリハリですよね。音楽で言えば、1曲の中で集中するサビのような部分もありますし。
来生:よく、プロは数千手を読むとかって言われますけど、そこまでは読まないでしょ?
島:読まないですね。数千手は読んでいないです。
来生:ただ、100以上は……。
島:100の単位には達すると思います。読み直しとかもしていますし。
来生:読んでいて、3つぐらい選択肢がある場合、結論は出るんですか?
島:比較してベターな方を選ぶしかない時もありますし。どれを読んでも結論が良くない時は……これも参るんですよね。
来生:そういう時は、どうするんですか?
島:第一感の手を選んだり、一番被害の少ない手を選ぶんですけど。被害がちょっと多い可能性があっても、魅力のある手があるんですよね。元々、形勢が悪い時は、どれを読んでも良くならないわけですけど。
来生:まあ、相手が間違えるということも、ありますしね。
島:3つ読んでいて、3つとも悪い時とか、3つ読んで、3つとも良い時は、結構、しびれちゃうんですよね。
来生:ああ、そうか。
島:これは、迷うんですよ。だから、ある種、方針がはっきりしている方が、やりやすいんです。2つあって、どっちも良い時は、本当に迷いますね。
小松:平均して、一局は何手ぐらいで終わるんですか?
椎名:100とか110とかぐらいが多いと思います。
島:中盤になると、一手一手、指していく間に、読む手がかりが増えてくるんですよ。いくら羽生さんでも、最初の開始局面から100手は読めない。一手指すごとに、陣形がはっきりしてくるんです。自分が手がかりを与えて、相手が手がかりをくれて、それで読む材料がどんどん増えていく。真ん中あたりが、一番、読めるところで、後の方になると、それが、はっきり、くっきり、出てくるんです。
小松:それだけ先を読むっていう……思考する時間があるから、テレビの番組として成立するんでしょうね。
椎名:横で見ていると、なんで1時間とか2時間とか、ずっと考えられるんだろうって思うんですけど、棋士の方は、どれだけ時間があっても足りないって言うんですよ。やっぱり、考えても、考えても、考える材料がありすぎて、選択に迷っちゃう部分があるんだと思うんです。
来生:いきなり長考する人もいますよね?
椎名:いますね。
来生:あれは精神統一なんでしょうか。
島:そうですね。でも、わけがわからないところで考える人もいるんですよ。「ここは考えるだろう」とわかる局面と、「ここで考えるのか」っていう……相手に長考されて、「嫌だな」と思う時と、「ありがたいな」と思う時と、両方ありますね。
来生:加藤一二三さんっていうのは、結構、序盤ですごく考えますよね。
島:意味なく考えるんですよ、あの先生は(笑)。しかも、考えても、良い手を指さない。それがまた、すごいですね(笑)。でも、難しいですね、適正な持ち時間っていうのは。坂東さんたち、女流の持ち時間は、すごく少ないんですよ。
坂東:平均すると2時間ぐらいでしょうか。