section05:
霊能力を持っている人って、いると思いますか?(来生)
来生:欧米での、キリストへの信頼度というか、昔は、法律より神の戒律の方が強かったけれど、そういう考え方は、段々崩壊してきていて、本当に敬虔な人というのは、あまりいないんじゃないですか。
岸田:厳密には、そんなに簡単でもないんです。大まじめに「ダーウィンは教えてはいけない」という人もいるわけで。ファンダメンタリズムということがありますから。
来生:でも、割と形骸化しちゃっているという感じがするんですけど。
岸田:形骸化しているといっても、それが精神の100%ではなくて、どこかで神を信じているところが残っているから。日本人も、「神なんて……」と思っているけど、祟りとか信じているところがありますよ。
来生:「オーラの泉」というテレビ番組があるんですけど、出演している霊能者が“祟り”とか言うんですよ。先祖が見えるらしくて。僕は、まったく見えないんですけど、嘘八百にしては、あまりにも巧みに言う。霊能力を持っている人って、いると思いますか?
岸田:僕は信じませんけどね。でも、そういうことを信じる人がいて、信じる人たちの間では通用することはあると思います。
来生:そうですよね。信じる人がいるから、やるわけであって、誰も無関心だったらやらないですよね。
岸田:例えば、資本主義社会では、金が権力であって、金を持っていれば、人を動かすことができる。金を持っている人の言うことは、ある程度、通るわけです。霊能力の場合も同じで、霊能力を信じている人は、そういう能力を持っているとされている人の言うことを聞く。その世界で霊能者として通用する人は、資本主義社会で金を持っている人と同じように権力を持ちます。人を動かせるという意味で。その人が能力を持っているということになっていて、他の多くの人たちがそれを認めれば、共同幻想になって現実に力を発揮します。
来生:宗教と同じで……。
岸田:資本主義社会では、お金が神様なんです。
来生:霊が見えたり、先祖がわかるっていうことは、科学的に証明できないですよね。でも、本当に見えているかもしれない。
岸田:他の人に見えないものが見えるということでは、幻覚を見る患者というのがいますけど、医学的には病気なわけで。
来生:霊が見えるというのも、どちらかと言うと、神経の病だということですか。
岸田:それを神経の病だとしているのが、現代の精神医学です。現実に、幻覚を見る人はいるわけですよね。「幻覚を見るのは、神経がやられているからだ」という判断は、現代の精神医学の判断であって、「超能力者もいるんだ」という共同幻想が、その社会にあれば、それは病気ではなく、超能力のためということになるかもしれません。精神病というのは、別に、脳にばい菌が入っているとか、脳に傷があるとかじゃないですよね。共同幻想の問題だと思いますよ。
来生:霊能力のある人というのは、子供の時に育った環境が違うのではないかと。例えば、僕らは3〜4歳頃で社会化されるけれど、それが遅れている人、例えば7歳ぐらいまでしゃべらないとか、そういうふうに育った人が、大人になった時に、霊力を持つということはあり得るんでしょうか。
岸田:近代科学で証明できないものは嘘だということになっていますけど、近代科学が100%正しいわけではないから。そういうものから漏れる、なんらかの能力が人間にないとは言い切れないでしょうね。例えば、戦争中に自分の息子が死んだ夢を見たら、本当に、その時に死んでいたということがあるそうですね。遠く離れた戦地のことが、どうやってわかったのかは説明できないですけど、そういうことはあるらしいです。
来生:母親は、過去に何度も同じような夢を見ている。だから、それは偶然なんだ、と。霊能力でも何でもない、という反論もありますね。
岸田:そういう説明も可能ですね。僕も、自分が体験していないからわからないですけど、そういう話をする人が、全員、嘘をついているとも思えないし。ときどきあるらしいですよ、そういうことが。戦友が「俺はここにいるから探してくれ」と言う夢を見て、実際にそこに行ったら、本当にそこで死んでいたとか。まあ、そういうことを利用して儲けようというヤツもいるだろうから。
来生:宗教にしても、そういう思惑でやっているものもあるだろうけど、本当に真面目にやっているものもある。そこが難しいところで。