デビュー30周年 オフィシャルサイト特別企画第3回 岸田 秀

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section06:
だから僕は、学会に入っていないんです(岸田)
来生:人間というのは、生き物としては一番下等というか、未熟なまま産まれてしまうけど、じゃあ、お腹にずっといれば完成されるのかというと、そうしてしまうと産道から出てくることは出来ない。猿が進化なのか、退化なのかはわからないですよね。
岸田:そんなことを言えば、地球上に人類が生まれたのは、いいことだったか、よくないことだったか。
来生:そうですよね。中でも、動物というのは、言葉や文化がなくても、立派にコミュニケーションできて、生きていられるのに、人間というのは、こういう、やっかいな社会を作らざるを得なかったわけで。他の動物は、作れないのではなくて、作る必要がない。人間は文化を作らなければ生きて行けない。やっぱり、他の生き物よりは下等ですよね。
岸田:それは、僕もそう考えていますね。
来生:岸田さんの理論というのは、研鑽努力している学者にとっては、やっかいなものでしょうね。「すべてが幻想なんだ」と言っているわけですから。虚しくなっちゃうというか、居場所がなくなっちゃうというか。
岸田:だから僕は、学会に入っていないんです。
来生:吉本隆明氏と岸田さんの対談を読んだんですけど、吉本氏は岸田さんのことを認めているけれども、本音としては「簡単に、そんなことを言ってくれるな」という……。
岸田:吉本さんとは議論が噛みあわなかった(笑)。
来生:やっぱり、そうでしたか。
岸田:対談したのは一度だけですけど、話は合わなかったですね。「なんで、そんなに難しく書くんだろう」って(笑)。
来生:ああいう本って、本当に難しく書かれていて、入り込めなかったんですけど、岸田さんの文章は、分かりやすくて入り込めたんですよね。すごいな、と思います。
岸田:分かりやすさが一番必要だというのが、僕の考えなんですよ。宇宙物理学の理論なら難しくてもいいですが、人間の心の理論は分かりやすいということが必要不可欠な基本的条件です。分かりにくい理論は、たとえ間違ったことを言っていなくても、分かりにくいというだけで理論として失格であって、一部の学者の自己満足に役立つだけです。たいていの人は難しい専門用語なんて知らないし、そういう大多数の人々が自分の心、人の心を理解するのに役立たないような理論はゴミみたいなものです。
来生:「ものぐさ精神分析」というタイトルは……。
岸田:僕のアイデアです。
来生:例えば、精神分析や心理学を真面目に勉強したいという人は、「ものぐさ精神分析」というタイトルだけを見て、「この本は、きっと面白おかしく書いた本だ」と思って見逃してしまうんじゃないでしょうか。で、他の本を買って、わけがわからず挫折してしまう。本当は、そういう人にとって最適な本だと思うんですけど。“能ある鷹は爪を隠す”的なタイトルだと思います。
岸田:それは誉めすぎです(笑)。
来生:岸田さんが子供を作らなかったのは、この社会で苦しみながら生きて、最後には死んでしまう存在を誕生させるのが哀しかったからですか?
岸田:意図的に作らないと思われがちなんですけど、そうではないです。たまたま出来なかっただけで。
来生:僕は、来生家なんて、どうでもいいと思っているんです。僕がいなくなったら、もう、どうでもいい。昔は「家を守る」という考え方があったけど、今は子供もバラバラじゃないですか。子供に何を託すのかと言っても、そういうものが何もない時代になっている。
岸田:岸田家も僕が死ねば確実に滅びますけど(笑)。
来生:何かを残したいという意思が、あまりないんです。名誉欲が強い人は、自分が死んだ後に、何かを残すために一生懸命やっているけれど。
岸田:そういうことはありますね。
来生:本当は、そうした名誉欲の強い人が、一番、死の恐怖を抱いているんじゃないかと思うんです。あまり暗い話をすると、軽蔑されたりするけれど、軽蔑している側の人は、何も考えていないかというと、そうではなくて、逆に強すぎて、そういうものが表に出るのが怖いから、色々なことをして隠蔽したがるのではないかと。
岸田:そうですね。人間は、自分がこの世から跡かたもなく消え去ることが怖いんじゃないですか。何か自分が生きていたという痕跡を残したい。子供は、確実に自分の遺伝子を引き継ぐわけで。それもひとつの方法ですよね。
来生:僕も、そうは思っていても、曲を作ったりして、それが後世に残ってほしいとか、そういう意識がないことはない。ある程度の年齢になると「もう十分やったから、いいや」と言う人もいますけど、本当のところ、100歳になったって、この世から消え去ることは怖いですよね。実際に、その年齢にならないとわからないですけど。
岸田:考えてみると、死の恐怖は若い時の方が強かったですね。
来生:若い時の方が?
岸田:30歳から40歳ぐらいの時は、死ぬのが怖くてたまりませんでした。死は今でも怖いことは怖いですけど。
来生:年齢から言うと、そう長くはないじゃないですか。
岸田:あと10年〜20年でしょうね。
来生:そういう寂しさというのは?
岸田:「だから一日一日を大事にしよう」というところまでは行かないですけど。
来生:若い時でも、一時期、そういうことを考える時期はありますよね。でも、そこで思考を停止してしまう。「そんなことを考えない方がいい」って。それで、そんな考えを否定したいがために、夢中になれることを探すんでしょうね。日本人は自殺が多いけど、他の国って、宗教的に自殺には厳しい罰が……。
岸田:キリスト教ではね。
来生:だから、外国では高層のホテルでもベランダに出られたりしますけど、日本では開かないようになっている。現実を真剣に生きるというより、岸田さんの言うように、「現実なんて、すべて幻なんだから、ムキになって生きることはないよ」という感じの方が、もう少し楽に生きられると思うんです。そういう意味で、岸田さんの本は力があるんじゃないかと思います。今日は、本当にありがとうございました。
岸田:こちらこそ、ありがとうございました。
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section05:霊能力を持っている人って、いると思いますか?(来生)