デビュー30周年記念として企画した「トークセッション」が、10年の時を経て復活!来生たかおが、自ら会いたい人にアポイントを取り、お店やメニューまでアレンジする対談である。今回は、フジテレビで放送されている「芸能界麻雀最強位決定戦THEわれめDEポン」の実況アナウンサー野島卓さんと、解説者の梶本琢程さんをお招きして、愛してやまない麻雀について語り尽くす。 来生たかおが選んだお店は、ハイアットリージェンシー東京の日本料理「佳香(かこう)」。落ち着いた雰囲気のお座敷で、極上の和牛ステーキを頬張りながらの対談は3時間に及んだ。
【ホスト】 | 来生たかお(きすぎ・たかお) |
【ゲスト】 | 野島卓さん(のじま・たかし): 梶本琢程(かじもと・たくのり): |
【外 野】 | 小松裕二(こまつ・ゆうじ): 渡辺智加(わたなべ・ちか): |
Part 3
- 来生
- 「THEわれめDEポン」に参加したことはないんですか?
- 野島
- ないです。バレちゃうと、好きなことを言えなくなっちゃいますから(笑)
- 小松
- 共演者と一緒にやられたこともないんですか?
- 野島
- いや、それはあります。
- 来生
- あるでしょう、加賀さんとか。
- 野島
- 萩原さんが一番多いですね。
- 来生
- やっぱり、なかなか勝てないですか?
- 野島
- 勝てないですね。
- 来生
- それは、どのくらいやるの? 半荘5〜6回?
- 野島
- その時のコンディションによりますが。
- 来生
- ルールは東南?
- 野島
- そうです。
- 来生
- 普通のルールで。
- 野島
- 東南しか、やらないです。
- 梶本
- めちゃめちゃストイックなルールですよね。
- 野島
- そうそう。
- 来生
- ドラも1枚。
- 野島
- 当然、そうですし、赤も入っていないですし。
- 来生
- 堺さんとか、怖いですか?
- 野島
- いや、堺さんとはやったことないです。
- 来生
- でも、TVで一緒になるじゃない?
- 野島
- 怖いイメージは一切ないですね。
- 来生
- 加賀さんとは、やったことあるんですか?
- 野島
- あります。
- 小松
- どんな感じなんですか?
- 野島
- あんなに可愛い70代を見たことないです。本当に素敵で。失礼かもしれないですけど、“可愛い”っていう感じです。
- 来生
- 昔、梶本さんが出ていた頃の雀士で……長村くんだっけ。
- 野島
- ああ、長村大。
- 来生
- そうそう、それから“麻雀バカ”。
- 梶本
- ああ、斉藤勝久さん。
- 来生
- 彼は、今でも?
- 梶本
- いや、もう辞めています。長村は僕より先に辞めましたから。
- 野島
- その実況をやったの、私なんですよ。
- 来生
- あ、そうでしたっけ!
- 野島
- 当時は会社がユルかったので(笑) 「New Wave Cup」ですね。
- 梶本
- 僕は、その後に出たんです。「New Wave Cup」を見ていて、プロの後輩たちが活躍しているのを見て、「羨ましいな」と思っていたんですけど、オーディションみたいなものがあって、通って、すごく嬉しかったですね。でも、ほとんど生き残っていないですね。
- 来生
- プロって、毎日のようにやっているんでしょ?
- 梶本
- 人にもよりますけどね。ずっと雀荘でやっている人もいれば、別の仕事をやりながら、やっている人もいます。一回、名前が出ると、それなりに雀荘の仕事とか、増えるので。女子プロなんか、特に。
- 渡辺
- あ、女性もプロが?
- 来生
- 今、多いよ。
- 野島
- 女性の方が食えるよね。
- 梶本
- そうですね。雀荘は男社会ですから、そこに女性がいると……
- 渡辺
- しかも、強いぞっていうと。
- 梶本
- 強いっていうか、愛嬌があるんですよ。遊び相手としてちょうどいい、みたいな。それで仕事が多いので。昔は、「強い、ベテランプロと腕試しをしたい」っていう人が多かったんですけど、今は、若い女の子と楽しい時間を過ごしたいっていう雰囲気なんです(笑)
- 来生
- 和久津さんみたいな人だったら、麻雀にならないんじゃかな、と。
- 梶本
- あれは、だいぶオヤジみたいな感じですから(笑)
- 来生
- この前、最強戦の女流の……(笑)
- 梶本
- 衣装ですか?
- 来生
- そう。あれには驚きましたよ。見た?
- 野島
- いえ、見ていないです。
- 来生
- もう、胸が飛び出すんじゃないかって(笑)
- 梶本
- こぼれそうな感じですよね。
- 来生
- なんだ、こりゃ、みたいな(笑)
- 梶本
- 水着みたいな衣装でやっていましたね。
- 野島
- それにしても、魚谷、強いね。
- 梶本
- 強いです。
- 来生
- ああ、魚谷は凄い。
- 野島
- あの子は抜けてますよね。
- 来生
- 豊後っていう女流プロとの対戦が凄かった。13万点くらいになって。
- 野島
- そうなんですか。
- 来生
- ひんしゅく買っちゃって。みんなハコテンなのに、親マン、親ハネ上がっちゃってね。
- 梶本
- 親っ跳上がって、メンチン上がった後に……
- 来生
- それから国士でツモっちゃった(笑) 遠慮しないで。
- 野島
- 公式戦でしょ?
- 梶本
- 最強戦です。もう、記録ですよ。
- 来生
- で、3人みんな、ハコ下。
- 梶本
- そこから2着争いをするっていうね。悲しい感じ(笑)
- 来生
- 凄い麻雀だった。ああいうのは、お叱りがくるんですかね。
- 梶本
- お叱りはこないです。そこまでやるんだったら、どうぞ、みたいな。ただ、飛びとかがないから。
- 野島
- そこで抜いちゃうと、自分のペースが乱れちゃうもんね。行けるところは行かないと。
- 梶本
- 本人も、「勝っても意味ないのにな」と思いながらやった部分があって、決勝ではスッカラカンになって。
- 来生
- その分、全部、使い果たしちゃった(笑)
- 梶本
- また、ビッグマウスなんですよ。
- 来生
- ああ、そうなの。
- 梶本
- 女子プロには珍しいタイプですね。まあ、今は女性優位です。圧倒的に。
- 渡辺
- そもそも、麻雀って、女性に向いていると思われます?
- 梶本
- どうでしょうね。
- 渡辺
- やっぱり、冷静じゃないといけないんですよね?
- 野島
- いや、直感に素直に従えるのは、女性だと思いますよ。男は、なんとなく理屈をつけたいので(笑)
- 梶本
- そうですね。
- 野島
- だから、決断が遅いんです。打つ牌は一緒でも、女性の方が速いです。
- 来生
- 本当に速いね。
- 渡辺
- 男性は理由を考えて……
- 野島
- いや、女性も考えているんですよ。男はね、言い訳を考えている(笑)
- 梶本
- まさに、その通り。
- 来生
- 金子プロって凄いよ。静止画像になっちゃう(笑) ものすごい長考で。
- 梶本
- 麻雀って、一打が速くて3秒、長くても8秒くらいなんですけど、3分くらい考えてる(笑)
- 来生
- で、色んな表情をするわけ。しまいにはネクタイかじったりする。
- 小松
- 長考の場合、なんかしら、あるんですか?
- 来生
- 「すいません」と言いながらね。
- 野島
- ルールはないです。ただ、TVだと、さすがにそれは……CMに入った時にプロデューサーが怒りに行きますね(笑) 「いい加減にしろ」って。
- 梶本
- 生放送でそれは……
- 野島
- プライベートでやってくれ、と。
- 梶本
- 収録だったら切れますけど。
- 渡辺
- そこは逆に、実況アナウンサーの腕の見せ所だったりして。
- 野島
- まぁ、そうかもしれないですね。
- 小松
- 将棋なら、そういうのも通用するじゃないですか。思案しているのを、色んな人が解説してね。
- 梶本
- 前に進む時は、そんなに考えないんですよ。何か人から攻撃されて、降りる時に、降りる牌がなくて、「どれが一番、安全だろう」って。通ってない牌を考えると、大変なんですよ。
- 小松
- それはもう、性分ですよね。
- 渡辺
- 勝つためじゃなくて、引くための言い訳?
- 梶本
- というか、自分が切った牌で負けちゃうことがあるので、できるだけ負けたくないから、安全なものを選ぶんですけど。そうですね、まさに性分でしょうね。
- 小松
- 当たり牌って、多くて2つか3つなんだけど、全部、自分が持っているんじゃないかと思っちゃう。
- 梶本
- 疑心暗鬼になりますよね。
- 来生
- リーチをかけるべきか、かけないべきか、という判断も難しいよね。
- 野島
- とても難しいですね。
- 来生
- リーチをかけたことで、周りの3人の流れも変わるじゃない。当然、ここはリーチという場合もあるけど、逆に上がれなかった、ということもあり得る。僕は以前、麻雀をやっていて、親が7巡目くらいでリーチをかけてきたことがあるんですよ。親の国士のテンパイで。發待ちで。捨て牌は、いきなり1索とか、西とか切っていて、国士には見えないんですよ。でも、リーチをかけてきた。で、下家が困って。場に發が一枚出ていて、親でリーチがかかってきたから、「ここはしょうがない」と。發、アンコですよ。三枚落として回していこうか、と。そしたらロンだったわけ。これってさ、リーチをかけなきゃ、アンコは出ないから。一応、常識的には、親で国士テンパって、リーチをかけるっていうのは、問題があるんじゃないですか?
- 梶本
- 常識というか、定石では、あまりないです。
- 来生
- ですよね。あえて、そこでリーチをかけちゃうという判断……
- 梶本
- 序盤の感じが国士に見えないんだったら、逆にアリ。普通はかけないですけど、かけておいて、局面を長引かせて、降りる人のオリ打ちを誘うとか。
- 来生
- 僕は、小学生の時に麻雀を覚えたんですよ。
- 野島
- すごいですね。
- 来生
- 小学4年生の時かな。3年生の夏休みまでは、文京区の駒込に住んでいて、そこから郊外のひばりが丘に移った。ひばりが丘団地っていう、マンモス団地があって、抽選で当たったんでしょうね。3年の夏休みに引っ越して。その翌年、北海道のいとこが東京の大学に受かって、4年間、居候したんです。そのいとこがギャンブル好きで(笑) スマートボールやら、パチンコやら。で、麻雀も好きで。親父も麻雀が好きだったから、休みの日とか、姉を含めて家族麻雀をはじめたんです。その時に、上がり方とか、役名……トイトイ、チートイ、一気通貫、三色、イーペイコーとか、そういうものを覚えた。一番やったのは、高校時代。あとは、デビューする前、キティレコードの事務所でインペグをやっていたんです。インペグって、ミュージシャンを手配するインスペクターのことで。レコーディングの時、アレンジャーがミュージシャンを指定するんだけど、それをインペグが聞いて、スケジュールを合わせる。
- 野島
- キャスティングみたいな。
- 来生
- そう、アルバイト的にやっていて。その時に、周りがみんな麻雀好きだったから、毎日のようにやっていましたね。でも、高校の時に詳しい奴がいて、そこで点数の数え方を教えてもらったんです。その時に教わったのは、基本は30符だと。ツモると20符になっちゃうけど、20符でカンチャンなり、アンコなりがあれば、そこで2符なり4符なりが付くでしょ。それを全部繰り上げて30符になるんだ、と。で、30符で上がって、自分がアンコで持っていたりすると、40符に繰り上げて。それで、イチロク(160)・ザンニ(320)・ロクヨン(640)・イチニッパ(1280)・ニゴロ(2560)・ゴイッチニー(5120)・ニーヨン(240)・ヨンパー(480)・クンロク(960)・イックニ(1920)・ザンパース(3840)・チーロンパー(7680)とかね、そういう形で覚えた。それでいいんですよね?
- 梶本
- もちろん。
- 来生
- 今は、7700とか、メンタンピン・ドライチとかって、全部マンガン?
- 梶本
- 30符4ハンは、全部、切り上げちゃいますから。
- 野島
- でも、いまだにニゴロとか言う人、いますよね。
- 来生
- ゴミ(300.500)とかね。ニッパラパラ(2880)とか(笑)
- 梶本
- それで覚えている人は、そこからスタートなので。
- 野島
- じゃあ、もうキャリアは50年以上ですね。
- 来生
- でも、一時、やらなくなって。最近も月に1回とか、多くて2回ですから。
- 梶本
- ご覧になっている時間は、結構、長いですよね。
- 来生
- そう。真剣に見ていて。結構、勉強になるね。泣いてタンヤオドラドラって、ザンキュウ(3900)にしていますよね。これは、なんでニゴロ(2560)にならないの?
- 梶本
- ピンフ系の喰いタンっていう?
- 来生
- カンチャンもアンコもなくても、タンヤオドラドラって、泣いてもザンキュウ(3900)になっているんですよね。
- 梶本
- 元々、最低の上がりが30符イーハンっていうふうに……特にリーチ棒が出てから、最低の上がりが1,000点になっちゃったんですよね。喰いタンピンの形って、700点なんですよ。それを倍々にしていった時に、ニゴロ(2560)の形になるんですけど、最低の上がりは、リーチ棒と合わせて1,000点ということにしたので。20符っていう上がりをピンフツモ以外のツモに採用しないっていうふうに、なっちゃったんですよ。それで、タンヤオドラドラも全部、1,000点、2,000点、ザンキュウと上がっていく、ということに。あまりないんですけどね。初心者が真面目に覚えた時に、「なんでこれは3,900にならないんだ?」って、絶対にブチ当たりますので、よく聞かれるんですけど。でも、麻雀って、そういう理不尽な点数とか、いっぱいあるじゃないですか。なんでチートイが1,600点で、50符のイーハンと同じなのに2ハンなんだろう、とか。そこらへんは、無理やり、辻褄を合わせているところがあるんですけど。
- 野島
- ホンロウチートイの徒労感とかね。
- 梶本
- そうですね(笑) それだったら、ただのトイトイの方がよっぽど高い。
- 来生
- 役満って、ほとんどやっています?
- 野島
- いや、テンホウ(天和)がなくて、リューイーソウ(緑一色)がなくて、ダイスーシー(大四喜)もないんです。
- 来生
- ショウスーシー(小四喜)は?
- 野島
- ショウスーシーはあります。
- 小松
- チュウレンポウ(九蓮宝燈)とか?
- 野島
- ああ、チュウレンもないです。
- 来生
- それって、やっぱりダブル役満しているんですか? 全部、ただの役満?
- 野島
- はい。複合したら、ツーイーソー(字一色)、ショウスーシーとかのダブルですけど。
- 来生
- じゃあ、スーアンコ(四暗刻)のタンキ待ちも、一応、役満?
- 野島
- はい、普通の役満です。
- 来生
- ああ、大三元でツーイーソーだと、重なるとダブル役満。
- 野島
- そうですね。結構、やっていないのが多いと思います。
- 来生
- 例えば国士の發で上がった形になりますよね。で、頭を切って。これはフリテンなしでしたっけ?13面待ちは。
- 梶本
- 決めによるんですけど、今はもう、フリテンにしています。
- 来生
- あ、フリテンになるんですか? まぁ、ツモるだろうと思うけど、ジャントウ(雀頭)のイーピン切った場合は、他の人が一、九、字牌を切ってもフリテンになっちゃう。
- 梶本
- はい。今は、国士の13面とか、チュウレンの9面待ちも、普通のシングルにしちゃうケースがあって。
- 来生
- そうですよね。ダブル役満じゃない。
- 梶本
- だから、ツモっている時点で、もう上がり、というふうにしちゃう人がほとんどですね。
- 小松
- じゃあ、基本的に当れないということですよね。
- 梶本
- 当たれないですね。
- 渡辺
- 流動的なんですね。
- 梶本
- 麻雀って、まず4人でルールを決めるんです。
- 来生
- 決めずにやっちゃって、その場面になった時、モメるんだよね(笑)
- 小松
- 役満で当たったら大変ですよね。「それフリテンだろう!」って。
- 来生
- シーサンプトー(十三不塔)だって、満貫にしているところもあるでしょ?
- 梶本
- ありますし、そもそも採用していないところもある。
- 来生
- 大車輪は?2から8、1から7、どっちでもいいの?
- 梶本
- どっちでもいいです。
- 野島
- え? 「THEわれめDEポン」で大車輪は採用していないでしょ?
- 梶本
- 採用していないですね。今、関西の三麻ぐらいですよ、大車輪でやっているのは。メンチン・チートイが大車輪で、メンホン・チートイが小車輪。
- 野島
- 小車輪なんてあるの?
- 梶本
- メンホン・チートイのことを小車輪って言うんですよ。車輪なんですけど、別にソーズでもいい、みたいな。
- 来生
- 素朴な疑問でね、正式な親の決め方っていうのがよくわからない。プロの対局の時に、場を決めますよね。TVの時は、親が決まっている状態から始まっているけど、あれは、どういうふうに決めるんですか?
- 梶本
- 公式戦だと、東西南北以外にイーピンとリャンピンを使ってやるんですけど。
- 来生
- それはわかる。その前の段階なんですよ、僕がわからないのは。本を読むと、「各人、好きなところに座って」と書いてある。
- 梶本
- はい。とりあえず、適当に座るんです。
- 来生
- それが納得いかないんですよ(笑) 土田浩翔みたいな人だと、たぶん、「自分は、あの席に座りたい」ってことがあるじゃないですか。そういう人は、誰かが座っちゃったら気分が悪いでしょう?
- 梶本
- そこから一応、シャッフルして決めるわけですから……
- 来生
- いや、まず、はっきり決めた方がいいんじゃないかな。
- 梶本
- くじ引きみたいな感じで?
- 来生
- それから、東西南北のイーピン、リャンピンをセットする人ですよ。あれは、誰に決まるんですか?
- 梶本
- 一応、プロの暗黙の了解では……
- 来生
- 先輩?
- 梶本
- いや、混ぜるのは後輩です。一番ペーペーか、新参者か。
- 来生
- 振る人は対面でしょ?
- 梶本
- そうです。どちらかと言うと、サイコロを最初に振る人が一番先輩。
- 来生
- ということは、その先輩の対面になった人が作るわけだ。
- 梶本
- そうです。例えば、二番目の先輩であっても作ります。
- 来生
- ああ、そういうことか。
- 梶本
- 同じメンバーで何回もやる時は、2回戦目から前回トップを取った人がサイコロを振るっていう、習わしになっていますけど。
- 野島
- あくまで不文律でしょ?
- 梶本
- そうです。なんとなくの。一応、微妙な縦社会なので(笑)
- 野島
- 若い奴がパッと押しちゃっても、それは続行されるの?
- 梶本
- 続行されますけど、後で別の先輩に怒られる(笑)
- 小松
- 「THEわれめDEポン」の場合は、どういうふうに決めているんですか?
- 野島
- つかみ取りです。
- 来生
- それで順々に?
- 野島
- いえ、毎回、つかみ取りで。後ろに青竜と書いてあるところが東なので、東をつかんだら、青竜に座らなきゃいけないんです。
- 来生
- その人が仮親?
- 野島
- いえ、それがチーチャ(起家)です。多少、手間を省いて。CMの間に決めなきゃいけないので。
- 小松
- それは、他の番組でもそうなんですか?
- 梶本
- 今のMONDOもそうですね。つかみ取りで。自動卓で穴が開いているところが東の位置です。自動卓には、あれしか目印がないので。
- 小松
- 同じように、そこが起家になるということですね。
- 梶本
- そうです。親決めのサイコロを振ったりはしないですね。つかみ取りで誰から取るかっていうのは、結構、アバウトなんですけど。誰から取ってもいいんですよ。
- 野島
- それはいいの?
- 梶本
- そこは、あまり決まっていないんです。
- 来生
- 年長者が取るとかじゃなくて?
- 梶本
- だいたいADさんが混ぜて、「はい、どうぞ」という感じです。
- 小松
- 「THEわれめDEポン」には、取る順番があるんですか?
- 野島
- 第1ゲームは、放送されないエキジビションマッチの順位で決まるんです。エキジビションマッチで優勝した人が東に座る。でも、誰から引いているか、見たことがないですね。CM中は点数計算で忙しくて(笑) 誰から引いているんだろう……
- 梶本
- 一応、先輩からとか、リーグ戦だったら成績のいい人からとか、なんとなくの雰囲気はあるんでしょうけど、そんなにカッチリは決まっていないです。目の前にいる人からどうぞっていう感じになっちゃいますね。意外と、そのへんはナーバスになっていない人が多いです。
- 小松
- 何回もやっているうちに、場を変えたいという人もいるんですか?
- 野島
- どうなんでしょう。思う方はいらっしゃるかもしれませんが、聞いたことはないですね。
- 来生
- よく半荘で変えるよね、最初から決めていれば。
- 小松
- 漫画の「賭博黙示録カイジ」を描いている……
- 野島
- ああ、福本伸行先生。
- 小松
- あの人も、とんでもない麻雀を打つイメージがあって。
- 来生
- ああ、結構、強い麻雀だよね。
- 小松
- あの人の脇にいたら、全然、違った麻雀になるんじゃないかな、って。とんでもない打ち方をしますよね。
- 野島
- いや、あの人の麻雀、わからないんです(笑) 一回、実は「THEわれめDEポン」に出て、チョンボしたんです。集中しちゃうと、周りが見えなくなっちゃうんだな、と。
- 小松
- やっぱり、こういう漫画を書く人だから(笑)
- 野島
- 本当に、異能というか。
- 小松
- 計算じゃないですよね、ヒラメキですね。
- 野島
- だと思います。
- 来生
- 女性には、そういう人が多いですよね。割と降りない。結構、強いよね。
- 来生
- 映画なんかでも、麻雀のシーンがあるじゃないですか。小津安二郎監督の「早春」っていう映画、見たことありますか。
- 野島
- いや、見たことないです。
- 来生
- 池辺良さんと岸恵子さんが主演で、サラリーマンの哀歓を描いた映画なんですけど、この映画に麻雀のシーンがあるんです。サラリーマン仲間のボロアパートの中で麻雀を楽しむわけ。このシーンは絶品ですよ。是非、観てください。
- 野島
- わかりました。
- 来生
- 本当に仲間同士の麻雀。麻雀以外の余計な話をしながら、時には歌を歌いながら麻雀をやるんですけど、これがものすごく自然なんです。緻密に計算されているんですね、小津映画だから。あれは見事で。あんなに自然な麻雀シーンって、他にないんじゃないかな、と思うくらい。本当に仲間が隠し撮りしているような、そういう感じで、本当に自然なんですよ。でも、あれは相当練習というか、リハーサルをしないと、たぶん、大変だっただろうな、と。実際、そうだったらしいですけど。引いてくる時に、何かセリフがあったり。「ポン」と言った後に、誰かが歌を歌いだすとか、全部決まっているんですよ。そのワンシーンが結構、長いんですけど、実にうまい。観ると面白いですよ。
- 野島
- はい、観ます。
- 来生
- 昔の映画なんで、手積みの麻雀ですけどね。あと、そもそも、麻雀って、「麻」の「雀」って書くじゃないですか。梶本さんの著書に「焼き鳥」の説明があったでしょう? その中で、「麻」の「雀」のことも、チラッと書いていましたよね。どうして「麻」の「雀」と書いて麻雀なのか。
- 野島
- 考えたこともなかったです(笑)
- 来生
- でしょ? 「烏龍茶」も「烏」の「龍」の「茶」って、意味があるわけじゃないですか。麻雀にも意味があるんだろうな、と思ってたら、梶本さんの本に「牌をかき混ぜると雀の鳴き声に似ている」というのが有力だと書いてあった。でも僕はね、「麻」は「麻薬」の「麻」だと思っているんですよ。
- 梶本
- 本当にそうですよ(笑)
- 来生
- 「麻」には「病みつきになる」という意味合いがある。だから麻薬という。で、「雀」は「少ない」に「隹(ふるとり)」って書くんですよね。「隹」って、「集」にも、「催」(人が山ほど集まる)にも使われている。だから、麻雀というゲームは、「病みつきになった少数の人間が集まってやる」。それで麻雀、と思っているんです(笑)
- 野島
- ほぉー!美しいですね。
- 来生
- 本当のことは、わからないですよ(笑)
- 野島
- いやいや、それは美しいです。
- 来生
- 麻雀って、麻薬的なところがあるじゃない。それで名付けたんじゃないかな、と考えたりしたんですけど(笑)
- 梶本
- ゲームとしては、完全にそうですよね。
- 来生
- 「烏龍茶」は、葉っぱが烏のように黒くて、葉っぱの形が龍の手足に似ているっていうことで、名付けられたんですよ。
- 渡辺
- 麻雀の由来は、諸説ありますっていう感じなんですか?
- 来生
- 僕の説なんか、穿った見方だけどね(笑) 昔から、「なんで麻雀って書くんだろう」と思っていて。
- 梶本
- 今、中国では、あの字を使わないので。
- 来生
- みたいですね。
- 野島
- 変わったの?
- 梶本
- 今は「麻将」なんです。中国から世界に出たんですけど、中国でしばらく禁止された後、逆輸入されて戻った時に、「マージャン」という発音に当てはめて、あの漢字を付けただけなんです。
- 野島
- スポーツ省が管轄するようになって、とか、井出さんが説明していなかったっけ?
- 梶本
- 後付けです(笑)
- 野島
- そうなの?(笑)
- 梶本
- 賭けない麻雀を示すって言ってますけど、あれ、単なる当て字なんで。
- 野島
- なんだ、嘘つきだなぁ(笑)
- 梶本
- そういうふうにしたほうが、イメージがいいから、ということで。
- 小松
- 中国でも麻雀は普通にやっているんですか?
- 梶本
- 今は、それなりにやっていて。
- 野島
- 文革でダメになったの?
- 梶本
- 第二次世界大戦の後くらいから、ずっとダメでした。
- 小松
- そうすると、元々の歴史って、どのくらい前からなんですか?
- 梶本
- 歴史でいったら、もう100年以上になります。1860年代くらいに今の形ができたと言われているので。
- 来生
- 日本は、明治になってからだね。
- 梶本
- 中国では、終戦前くらいから、文革の後くらいまでダメで。牌も残っていないし、文献も残っていないし。
- 小松
- それは、ギャンブル性が強いから、ということで?
- 梶本
- そうですね。亡国の遊技ですから。でも、毛沢東は一応、中国の三大文明は「紅楼夢」という小説と、漢方薬と、麻雀だと言っているんですよ、文献では。まぁ、でも、麻雀を一番発展させたのは日本ですから。
- 小松
- アメリカには麻雀があるということだけど、ヨーロッパにはないんですか?
- 梶本
- あるんですけど、人口は少ないです。アメリカも、やっていると言っても、40万人くらいですから。
- 野島
- 日本の連盟にはヨーロッパチャンピオンがいるって……
- 梶本
- そうです。あれは、これから世界的な遊びに広げていこうっていう戦略ですからね。
- 来生
- 麻雀のマナーって、ありますよね。プロは、麻雀用語以外は慎む、という。
- 梶本
- ああ、「ポン、チー、ロン、カン、リーチ」以外は喋らない、ということで。
- 来生
- 本当に、そうなの?
- 梶本
- 公式対局では喋らないですね。だから、いわゆる一般の人とやる時に、喋れない人ばっかりなんですよ(笑) 普通にコミュニケーションとして、喋りながら麻雀ができない人が意外と多いんです。黙ってやる麻雀しか、していないので。
- 来生
- 上がる場合は、「ロン」以外、言わないんでしょ?
- 梶本
- そうですね。
- 来生
- 僕らは、適当に「あ、そのイーピン」とか、「それ当たり」みたいなことを言うけど(笑)
- 梶本
- 出た後に「イッパーツ!」とか言いますよね。
- 来生
- それはダメなんだね。
- 梶本
- ダメです。
- 来生
- 「ポン」とか「チー」は、最初に言った人が優先ですよね?
- 梶本
- そうですね、よくもめるんですけど。
- 来生
- 言った人が優先でしょ?
- 梶本
- はい。発声の早い方が。
- 小松
- つられるんですよね(笑) この間も、「チーしようかな」と思った時に、隣で「ポン」と言った瞬間、追っかけで「あ、チー」とかね。
- 梶本
- チーの方が優先権ないんですけどね(笑) それはよくわかります。
- 来生
- 例えば「ロン」の場合、言う前に「ポン」なんて言われても、これは「ロン」が優先ですよね?
- 梶本
- ただ……
- 来生
- ええ!?
- 梶本
- 例えば三色で、5は安め、8は高めで、5が出て見逃そうと思っていた、と。
- 来生
- 「ロン」って言わないで。
- 梶本
- ところが、それに「ポン」ってかかっちゃったら、慌てて「ロン」っていうケースもあるんですよ。
- 来生
- ああ、そういう場合もあるか。
- 梶本
- 一応、周りの様子を確認して、見逃す気だったんだけど、声がかかっちゃったから「ロン」みたいな、そういうのもあるんですよ。
- 小松
- そうなると?
- 来生
- マナー違反だよね。
- 梶本
- 普通は認められないんですけど。「ちょっと発声が遅いじゃん」みたいな感じになって。でも、だいたい“なぁなぁ”で済んじゃいますけどね(笑)
- 小松
- ロンを優先しちゃうんだ。
- 梶本
- そうなんですよ。ただ、一応、プロの場合は、必ず、チーは「ポン」の声がかからないのを待ってから発声しなさい、というのがあるんです。チーは、ワンテンポ置かないといけない。
- 来生
- へぇー。
- 梶本
- あまり早く「チー」って言うのは、本当はダメなんです。
- 小松
- チーは間をとって。
- 梶本
- 一拍あけてから「チー」って言いましょう、と。一応、そういうのがあるんです。あまり浸透していないですけど(笑) 特に、一般のフリーでは、そんなこと全然、関係ないんで。
- 小松
- そうだよね、言ったら勝ちだから。
- 梶本
- だいたい、発声優先っていう。で、おっしゃったように、「ロン」が一番強い。
- 来生
- 「ポン」と言われても、「ロン」が優先。
- 小松
- ちょっと、いやらしいっていうニュアンス。
- 梶本
- 「こいつ、ポンって言ったから、ロンって言いやがったな」と思うんですけど、文句は言えない(笑)
- 来生
- ブラフも、やっちゃいけないんでしょ? 例えば、マンズのチンイツで、ピンズなんかを引いてきて、考えたフリして切っちゃう。
- 梶本
- それは三味線ですね。ダメです、あれは。
- 小松
- え? どういうこと?
- 梶本
- 例えば、僕の捨て牌が、いかにもマンズのチンイツです、と。なのに、ピンズで切ったのに、ちょっと考えたりするんですよ。
- 小松
- そんなこと、する人いるの?
- 来生
- 相手がさ、「あ、チンイツじゃないんじゃないか」って。
- 梶本
- 錯覚して。
- 来生
- それで切らせちゃう。
- 梶本
- 「お前、この6筒で何を考えてるんだ」みたいな(笑) よく雀荘でモメるパターンなんですけど。「いや、ここから6筒が出てきたら、ちょっとわからなくて、考えたんだよね」という言い訳をする。
- 野島
- プロはやらないでしょ? さすがに。
- 梶本
- やらないと思います。やったらクビものですから。
- 渡辺
- そういうところは、ポーカーと違うんですね。
- 梶本
- そうですね、ポーカーは何でもアリですから。
- 渡辺
- 騙してナンボっていうカードゲームとは違う。
- 梶本
- 本当は、全部アリにしたほうが、ルールとしてはシンプルなんですけど、そうなると本当に、麻雀としての……
- 渡辺
- 品位的なもの?
- 梶本
- そうですね。面白さも損なわれてしまうし。
- 小松
- 僕なんかは、自分が捨てた牌も、いっしょくたに考えているんです。何か引いた時に、この場には関係ないんだけど、「いや、これを持っておけば……」っていう。それを含めた上で、落ち込みみたいなものもあるんだけど。そういうのは問題ないんですよね?
- 梶本
- もっと相手をハメてやろう的な感じなので。どちらかと言うと。
- 来生
- あと、点棒の払い方もある?
- 梶本
- あります。
- 来生
- いきなり子供が2,000、4,000をあがったら、親はやっぱり、5,000点棒出すのが筋?
- 梶本
- 4,000点を出しちゃうと、次のリーチ棒がなくなるから。
- 来生
- そうすると、1326(1300,2600)の場合は、1,000点棒と3本出すんですか?
- 梶本
- 例えば1313(1300,1300)って払って、5,000点出したら、2600の人は2400バック。それが一番、スマートです。
- 来生
- プロは、そういうところも計算して。
- 梶本
- まぁ、習慣ですかね。ある程度、慣れているので。
- 小松
- そうすると、子がツモった時って、子が払ったのを見て、親が払うっていう感じ?
- 梶本
- いや、周りがなんとなく、それぞれ雰囲気を察して、「この人は何点出しているな」と思ったら、どうやったら点数のやり取りで一番本数が少なくてすむかな、というのを考えて、「じゃぁ、僕は1,000点出そう」とか。
- 小松
- 最後に出す人が?
- 梶本
- そうです。お互い、みんな様子を見ています。誰が何本出すか。
- 小松
- そこに性格があったりする?
- 梶本
- 何も考えないでパッと出すひともいるんですよ。でも、そういう人がいるから場が動く(笑) みんなが様子を見ていたら、「誰が1,000点出すかな」って、いつまで経っても支払いが終わらないんで。
- 来生
- あと、上がった時に手役は言わないですよ。もう、2,000、4,000。
- 梶本
- そうですね。
- 来生
- ナナトウサン(700,1300)とかね。我々だったら、メンタンピン・ドライチみたいに言うんだけど、そういうことは言わないですよね。
- 梶本
- 僕は言うんですよ、実は。わざわざ。教室をやっていることもありますし、アマチュアを相手にすることが多いので。一応、全部言っておいたほうが早かったりするので。結果的に。まぁ、プロ同士の場合は、言うと変な空気になるので、言わないですけど(笑)
- 野島
- 変な空気になるんだ(笑)
- 梶本
- 「このシロウトが!」っていう(笑)
- 小松
- 知らないで対局して、半荘やると、その人の性格みたいなものがわかったりするんですか?
- 梶本
- わかりますね。ボソっとした言動とか、振り込んだ時にイラっとしたりする様子が出たりとか。「あの泣きがどう」とか、人のせいにしだしたりすると、「あ、意外にこの人、こうなんだ」みたいなところが、ちょっと見えたりして面白いですよ。
- 小松
- 言動がなくても、点数を払う時の立ち居振る舞いとか。
- 梶本
- そういうのもありますね。遠慮しているな、とか。
- 小松
- 野島さんも、わかったりするんですか?
- 野島
- いやいや、考えないです(笑)
- 来生
- やっぱり、メンタンピンとか、満貫とかね(笑)
- 野島
- 満貫とか言うと、シロウトっぽいですね。言われてみれば。8,000とか、2,000、4,000とか言ったほうが通っぽいですね。でも、つい「満貫!」とか言っちゃいます。
- 梶本
- 満貫とかは、点数を言っているのと同じだから、全然。
- 来生
- いちいち、メンタンピン・ドライチとかね。
- 梶本
- こう、指を折りながらやっていると(笑) でも、そっちの方が早いんですよ。みんなに説明していることになるので。
- 小松
- でも、早い人と一緒にやって、点数を言われると「何が?」みたいになる(笑)
- 梶本
- それで、確認作業が始まるじゃないですか。余計、時間の無駄になっちゃうから、全然、問題ないです。
- 小松
- テレビの場合は、どうしているんですか?
- 野島
- やっぱり、観ている人のレベルが幅広いので、必ず言うようにしています。
- 小松
- MONDOもそうですよね?
- 梶本
- そうですね。実況の方が言ったりとか。