デビュー30周年記念として企画した「トークセッション」が、10年の時を経て復活!来生たかおが、自ら会いたい人にアポイントを取り、お店やメニューまでアレンジする対談である。今回は、フジテレビで放送されている「芸能界麻雀最強位決定戦THEわれめDEポン」の実況アナウンサー野島卓さんと、解説者の梶本琢程さんをお招きして、愛してやまない麻雀について語り尽くす。 来生たかおが選んだお店は、ハイアットリージェンシー東京の日本料理「佳香(かこう)」。落ち着いた雰囲気のお座敷で、極上の和牛ステーキを頬張りながらの対談は3時間に及んだ。
【ホスト】 | 来生たかお(きすぎ・たかお) |
【ゲスト】 | 野島卓さん(のじま・たかし): 梶本琢程(かじもと・たくのり): |
【外 野】 | 小松裕二(こまつ・ゆうじ): 渡辺智加(わたなべ・ちか): |
Part 4
- 来生
- 親でサイコロの4が出た時、左手で牌を持ってはいけない。基本的にリーパイ(理牌)した後は、利き手で全部、やらなきゃいけないんですよね。
- 梶本
- そうです。最初に並べる時は、両手を使ってもいいんですけど。
- 野島
- 「THEわれめDEポン」は、サウスポーの方が不利なんですよ。カメラが自分の左後ろから抜くので、左利きの人にも「右手で打ってください」ってお願いしているんです。
- 来生
- あ、そうなんだ。
- 野島
- 左利きの人は、途中でつい、左手が伸びてしまって、ディレクターから注意されて右手に変える(笑)
- 梶本
- それは、気になっちゃいますね。
- 小松
- それで、基本的に乗せないといけないんですよね。
- 野島
- そうです。
- 来生
- 夢中になっちゃって、忘れる場合もありますね。
- 小松
- 今まで、一番凄かった回というと?
- 野島
- 最近で覚えているのは、4月に地上波で放送した回の、最後のゲームの萩原聖人さんの2索単騎ですね。優勝目前だったんですけど、加賀まりこさんとの点差が満貫ちょっとぐらいだったんですよ。で、坂上忍さんが嵌張の2索待ちでリーチを打ったんですね。萩原さんはチートイやっていて、2索が浮いていたんですよ。河とか場の状況を見ると、2索を打ってもおかしくないのに、打たないんです。結局、2索単騎のチートイでテンパイを入れて、加賀さんが2索を打って、頭ハネで萩原さんが上がったっていう。
- 来生
- 2索を切らなかった。
- 野島
- はい。普通だったら、どう見てもアンパイなんです。
- 小松
- 5索は出ている?
- 野島
- 5索はもう、序盤に切れていて。1索も3枚切れているんです。で、「なんで2索を止めたの?」と聞いたら、「忍くんが5索の後に手出しの1索だった」と。
- 梶本
- なるほど。
- 野島
- 「ツモ切りの1索だったら2索に行くんだけど、手出しの1索だから、カン2索だなと思った」と言われて。やっぱり、この人と麻雀を打っちゃいけないな、と(笑)
- 小松
- そうすると、5索を待っているというイメージになるんですか?
- 野島
- 1135から5を切って、その後1を切ってきたんだな、という……
- 小松
- そういう発想になるんだ。
- 梶本
- 5よりも1の方が、何か関連していたということで、隣の2が筋だけど、可能性があるかな、と。まぁ、そこまで信じきれるものではないですよ。
- 来生
- でも、切る牌がなくなったら、やっぱり切りますよね。
- 野島
- でも、切る牌、押しているんですよ。無筋を押しながら……
- 小松
- 押しながら、2索を残してある。
- 野島
- そう。
- 梶本
- たぶん、2分の1くらいの確率で当たると思っているんですよね。
- 小松
- 男前!
- 野島
- 信じられないですよ。
- 来生
- この前も、最強戦で佐々木さんが地獄の東、タンキでリーチをかけたけど。
- 野島
- 佐々木寿人さんですか?
- 来生
- そうそう。それと、強いなと思っている、若手の……誰だっけ? 岐阜に雀荘を2店持っている(笑)
- 野島
- そんなサイド情報を(笑)
- 来生
- この前、地上波の「THEわれめDEポン」で優勝した……
- 梶本
- ああ、森下剛任?
- 来生
- 彼は東を出さなかったですよね。僕らだったら、たぶん、安全だと思って切っちゃうんだけど。
- 野島
- 状況はどうだったんですか? 森下さんは余裕があったんですか? 余裕があったら打たなくて済むんですよ。ボーダーラインのギリギリだったら、森下さんは打つタイプだと思います。よっぽど余裕があったか、全然、目なしだったか、どちらかじゃないかな、という気がします。
- 梶本
- テンパイに遠かったら、あまり打たないですね、地獄でも。他にアンパイがあったりしたら。
- 来生
- 確実なアンパイがあればね。
- 梶本
- 少しでも手が進んで、上がりたい手、あるいは、降り切れなくなったら、まず出るんで。たぶん、細かいだけで、基本的にはそんなに変わらないです。さすがに地獄の東は、そんなに止まるものではないので。他にあったら、そっちを先に切るというマネジメントが普段からできているだけの話で。
- 来生
- あ、役満、振ったことあります?
- 野島
- ありますよ、もちろん。
- 来生
- 僕は役満を振ったことないんですよ。
- 野島
- ええ!
- 梶本
- それはすごい!
- 来生
- チョンボも……今年になって1回やったけど、それまでなかった。
- 野島
- すごいですね。
- 来生
- ただ、1回だけ、ダブル役満を振る寸前だったことはあるんです。
- 野島
- 踏みとどまった?
- 来生
- 昔だけど。僕の上家が遅い人で、回を重ねて、結構、みんな、いい加減になって。対面がスーアンコタンキ待ちで、2索、5索切って、8索タンキなんですよ。で、リーチをかけてきて、カミチャの遅い人が考えているわけ。そのうち、対面の僕がイライラして、8索を切っちゃった。先ツモしちゃって。
- 野島
- え? 先に切っちゃった?
- 来生
- 今は、そんなことしないけど(笑)、遅いから。いい加減になっているし。8索を切っちゃった。対面は当たりじゃないですか。だから、催促するわけですよ、上家に「早く切れ」って。
- 梶本
- ああ、なるほど。
- 来生
- それで、彼が打った牌に、こっちの下手が「ロン!」って言った。
- 野島
- すごい(笑)
- 来生
- だから、僕は8索……スーアンコタンキ待ちを振らないで済んだ。そういうのはあるんですけどね(笑)
- 梶本
- それはすごいですね。
- 来生
- 上がったのは、結構あるんですけどね。実は、10年近く前に片山さん、梶本さんと対談したんだけど、対談する前に、一回、麻雀をやりましょうってことで、吉祥寺に行って。
- 梶本
- 打ちましたね。
- 来生
- 片山さんの……
- 梶本
- 「ミスチョイス」で打ちました。
- 来生
- あの時、僕、役満を上がったんです。四暗刻。
- 野島
- その話はうかがいました。やっぱり持っていらっしゃいますね。
- 来生
- いやいや。
- 小松
- 持っていますよ。半荘4回で2回上がりましたから。
- 来生
- スーアンコと大三元かな。
- 梶本
- 狙う人は、やっぱりついてきますよね。役満を意識していないと、できないと思います。
- 野島
- でも、振ったことがないって、すごいことですね。
- 来生
- 不思議に。
- 梶本
- 僕は何回もありますよ。
- 野島
- 僕も、つい先日、国士を打っています。箱下から国士を打って、死にそうになった(笑)
- 梶本
- やっぱり、絞れないですからね。テンパっているとわかっていても、大丈夫だろうって。
- 野島
- 甘えるよね(笑) 本当に、余裕があるかだよね。余裕があれば甘えないのに。
- 小松
- 「まさか」って、都合のいいように。
- 来生
- 梶本さんは、麻雀の普及について、色々と考えているんでしょ?
- 梶本
- そうですね。
- 来生
- どうしても、ギャンブル性が高いというイメージがあるから。ゲーム自体は深くて面白いじゃないですか。4人でやるから、将棋や囲碁と比べると、運にも左右される。運と技術が絡まりあって、強い人が常に勝つわけじゃない。牌の巡りあわせが面白いし。やっぱり、NHKで、なんとかね(笑)
- 梶本
- 本当ですね(笑)
- 来生
- 将棋も囲碁も放送しているし、ピアノのお稽古もやっているんだから。
- 渡辺
- Eテレとかでやってそうですけどね。
- 梶本
- 実は20年くらい前に、企画を持って行ったんですよ。そうしたら、「麻雀はルールが統一されていないから」っていう理由でNGが出た。実際の理由はわかりませんけど。東京ではわかっても、鳥取ではわからないのは具合が悪いから、「まず統一してくださいね」って課題を突き付けられました。
- 野島
- そこはフジテレビにお任せいただければ(笑)
- 来生
- プロの対局なんかも、NHKでやればいいのに。
- 野島
- ただ、プロはNHKを出入り禁止になっちゃう人が多いんじゃないかな(笑)
- 梶本
- 捕まらない感じでやってもらわないと(笑) 雀荘で賭け麻雀はダメですから。
- 来生
- 麻雀は、勝率が6割だと「不敗」だって、色川武大という作家が言っていたんです。
- 梶本
- 1着と2着を合わせて6割ということですか?
- 来生
- そう。
- 梶本
- 6-4で勝つのがセオリーだと。
- 来生
- とにかく、勝ったり負けたりですからね。絶対に勝ちっぱなしは有り得ない。勘とツキは親戚関係だと思っていて。勘がいい時はツイている。
- 梶本
- そうですね。冴えるし、思い切ったこともできるし。
- 来生
- しかし、ツキって不思議ですよね。僕は流れを考えない人なんですよ。
- 梶本
- なるほど。
- 来生
- アナログの人間だけど、麻雀はどちらかと言うとデジタル。続けて乗って上がる場合もあるけど、親跳ねで振っても、すぐにハネマンで上がったりするケースもある。だから流れは関係ないと思っているんです。あと、これは癖なんだけど、最大限……例えば、788で早めに8索を切っちゃう。小島さんなんか、よくやるよね。ちょっと迷彩を打っておいて。そういうのは、僕は、まずやらない。788あったら、絶対に8は切らない。だって、アンコる可能性があるでしょ。
- 野島
- そうですか、へぇー。
- 来生
- ピンフのイーシャンテンで……雀頭があって、788があって、ターツがあって、どちらか。8索がアンコになれば、テンパりますよね。その場合、僕は絶対にそうするんです。牌が残っている限り。アンパイを残して8索を切るっていうことは、まずしないです。自分が親だったらなおさら。
- 野島
- それは、守備に自信がおありなんですよ。僕は守備に自信がないので(笑)、とにかく8索を早く切りたくてしょうがない。
- 梶本
- どっちか、わからない時はね。
- 野島
- まず8索を切っちゃう。迷彩っていう観点ではなくて、余剰牌を持っていたくないんです。
- 来生
- リーチがかかった場合の安全牌ですよね。僕は切らないんです。切って雀頭がアンコになっちゃうことも経験しているから。
- 野島
- それで勝っていらっしゃるってことは、やっぱり守備が強いんですよ。
- 来生
- そうなんですかねぇ。
- 野島
- 間違いなく、そうだと思いますよ。
- 来生
- あと、九牌で流したことがないです。
- 野島
- 国士に行かれるんですか。
- 来生
- 絶対に行きます。チャレンジする。
- 野島
- テレビ向きです(笑)
- 来生
- 八牌でもやりますね。この前、小松がチョンボしちゃったけど
- 小松
- 九種九牌だと思って。
- 来生
- 八種類しかなかった(笑)
- 野島
- 残念(笑)
- 梶本
- どこかがダブっていたんですね(笑)
- 小松
- もうショックで。国士やればよかった。
- 来生
- 今度、一緒にやりましょうよ。
- 野島
- ぜひ、お願いします。
- 来生
- でも、やる場所がね。
- 野島
- どこでも馳せ参じますよ。
- 来生
- 吉祥寺なんか、行きます?片山さんのところ。
- 野島
- 何度か行ったことがあります。
- 来生
- 僕の家は遠いから。東久留米なんで。
- 野島
- 逆に、「THEわれめDEポン」には、ご出演いただけないですか?
- 小松
- 面子が問題(笑)
- 梶本
- そうか、タバコを吸う面子じゃないと(笑)
- 来生
- 僕は、来年の秋から、肩書が「隠居」になるんですよ。
- 小松
- 40周年が終わったら、しばらく休むって言うから。
- 来生
- だから、来年の周年終わり以降なら出られますよ(笑)
- 野島
- ありがとうございます。その旨、伝えておきます。
- 来生
- でも、練習しないとね。
- 野島
- そうですね。ルールに慣れているのと、慣れていないのでは、大きく違いますので。片山先生も、あまりいいところがなかった。
- 来生
- 藤田晋さんだって、そうでしょ。
- 梶本
- 藤田さん、直前に練習したんですけど、それでもなかなか。
- 小松
- やっぱり、テレビで見られているっていうのがね。切り方に対して、何か言われているんじゃないか、とか(笑)
- 来生
- 野島さん、辛辣だから(笑)
- 梶本
- 実況席だけじゃなくて、視聴者もキツい(笑)
- 渡辺
- 出演者の方は、野島さんのコメントも聞こえているんですか?
- 野島
- それは聞こえていないです。
- 来生
- でも、普段、観ているからね。
- 渡辺
- いざ、自分が行ったら、何を言われているかって(笑)
- 来生
- あとで本人がビデオを観たら怒るだろうな、っていう感じ。土田プロの時とかね。
- 野島
- 土田プロという人間を信用していないんです(笑) 解説者としては素晴らしいんですが、人間的には本当にダメな人で。
- 来生
- 土田さんって……伊藤優孝さんも、そうかもしれないけど、第一打で字牌を切らないですよね。あれは信念というか、流儀というか。
- 梶本
- そうですね。そういう教えで。
- 野島
- スピードワゴンの小沢さんもそうです。
- 来生
- 例えば、ダブリーでチートイ・ドラドラでね、北と西が余って、どちらか切ればダブリー。この場合は、どうするんですか?
- 野島
- 対子の字牌じゃないのを切るんです。
- 来生
- うわー。
- 小松
- 絶対に切らないんだ。
- 野島
- 切らないですよ。実際、小沢さんが字牌を切れば、リャンメン・リャンメンにイーシャンテンだったのに、ターツを1個、はずしたんです。字牌を切らないで。
- 来生
- そうですか。
- 野島
- ただ、第一打に字牌を切らないと決めておくと、楽は楽なんですよ、きっと。制約が一杯ある方が、実は楽じゃないですか。そういう意味なんだと、勝手に理解しています。
- 来生
- 麻雀って、定石があるようでないですもんね。将棋は第一打が決まっているでしょ。角道を開けるか、飛車先の歩をつくしかない。でも、麻雀って、別にないですよね。例えば、北が余っているから、北と西で、北を切ったら、続けて3枚北が来ちゃった、なんていうのは、下手じゃないわけで。「ここはこう」っていうところもありますけど。僕の場合、本当はいけないのかもしれないね。確率的に、まだアンコる可能性があるのなら、アンパイを残さない。
- 野島
- いや、いけないことはないですよ。
- 来生
- 特に、親の時は、絶対にそうするんです。とにかく、早くテンパイって考えて。確率で、そういう打ち方をするんですけど。
- 梶本
- たぶん、そうやって構えると、上がりの確率が高くなるんですよ。そうなると、相対的に振り込みになる可能性が減るじゃないですか。同時に、ブクブクに持っていたことで、危険牌になって振っちゃうっていう。どっちも、うまくバランスが取れていると思うんです。あとは、性に合うか合わないか。
- 来生
- 逆に、「ああ、残しておけばよかったな」という時もありますけどね。振っちゃって。
- 梶本
- 先切したから、役がついてなかったってこともあるし、先に切ったから、アンコになってた牌を切らなきゃいけなくなったり、どっちもあるので、やりやすいように。毎回、応用問題みたいなものですから。一応、定石ではありますけど、望まない結果になることばかりじゃないですか。だから楽しいというか。刺激をもらう遊びなんじゃないか、と。
- 野島
- 今、プロはバックの仕掛けを普通にやるよね。
- 梶本
- あれは、安全と効率を考えた……僕もついて行けないところがあります。
- 来生
- バックの仕掛けって?
- 野島
- 例えばリャンメンをチーして、白と八萬のシャボでテンパイを入れて、白が出たら上がれる。
- 来生
- ああ、後付け。
- 野島
- それを今、プロが平然とやるんですよ。それもちょっと、気持ちが悪いな、と。ルール上、悪くはないんですけど、なんかねぇ(笑)
- 来生
- 亜空間とは違う?
- 梶本
- 違います。亜空間は非常手段ですけど、常套手段でやるわけですから。考えていることはわかるんですけどね。
- 来生
- そう言えば、亡くなった方も、結構、いらっしゃいますね。安藤満さんが亡くなったのはショックだったんですけど。飯田正人さんもね。最近では白川道さんが亡くなって。白川さんは、よく最強戦に出ていましたよね。まだ60代じゃないですか?
- 梶本
- 69歳ですね。カッコいい麻雀を打っていましたよ。ああいうのが“見せる麻雀”なのかな、というくらい。
- 来生
- それにしても、藤田晋さんは強いね。
- 梶本
- めちゃくちゃ鍛えてますよ、今。プロと週1くらいで打っていますから。
- 来生
- 最強戦って、何局くらい打つんですか?
- 梶本
- 予選が半荘1回で、決勝も1回しか打たないんです。
- 来生
- 予選は半荘1回?
- 梶本
- 1回打って、2位までに入れば決勝卓に進めて、決勝卓でトップを取れば本戦に進めるんです。本戦は16人が4卓に分かれて。
- 来生
- 本戦は何局?
- 梶本
- 半荘1回だけです。
- 来生
- それで勝ち抜くっていうのは、すごいよね。MONDOでは、毎週やっていますよね。あれは、まとめ撮りですか?
- 梶本
- 1日4本。半荘4回です。
- 来生
- それを4カ月くらいかけて放送する。
- 梶本
- そうですね。2日まとめて8半荘を撮って、一カ月後くらいに8半荘を撮って、1シーズンが終わる。
- 来生
- 今、一番強いプロは誰なんですか?
- 梶本
- それぞれタイプが違うから……
- 来生
- その日のツキってあるじゃないですか。でも、毎日、同じ時間に1年打ったら、レベルがわかりますよね。
- 梶本
- プロは、それぞれのリーグとか、同じグループの中で打っていて、強い人は2年くらい強い期間があるんです。無敵の期間が。自信もあるだろうし。相手にとっては脅威というか、先に「この人、すごいからやめちゃおう」っていうのもあって、勝つ人が続けて勝ちやすいんですけど、1回、落ちると、なかなか大変です。取り戻すのが。
- 来生
- スランプとか?
- 梶本
- 気のものによるところが大きいと思うんですけど、うまくいかないと焦って、余計、悪い選択をしちゃったり。あと、戦術というか、打ち方も、ずっと同じだと相手に研究されて、やられちゃうので、少しずつ変えていっているみたいですね。
- 野島
- デジタルで変えようがあるの?
- 梶本
- 変えているみたいですよ。対人戦略的な。要は、運を考えないっていうだけなので、「こう打ったら、相手はこう考えるだろう」とか、「嫌がるだろう」とか、「降りるだろう」っていうのを想定してやったりするので。そこは流れとか、あまり関係ないじゃないですか。そういうのをやったり、ブラフを入れたり。マンズのホンイツでバラバラなんですけど、捨て牌を並べて、マンズを1個、仕掛けておけば、だいたい警戒するじゃないですか。でも、こっちはバラバラ。そういう捨て局みたいなものを作ったり。
- 野島
- そこは牌理、関係ないんだ。
- 梶本
- 関係ないですね。
- 野島
- それでもデジタルなの? デジタルじゃないよね、既に。
- 梶本
- 彼らが考えていることって……
- 来生
- 確率?
- 梶本
- そう。「今、流れがいいから、次も上がれる」っていうものを考えないだけで。「調子がいいから、ロン牌をつかまないだろう」っていう考え方をしない。手法は人によってバラバラだし。
- 野島
- 牌理至上主義がデジタルじゃないんだ。
- 梶本
- じゃないんです。例えば、小林剛は、それこそ来生さんのように、788をずっと持っているタイプだったんです。昔は。でも今は、8を先に切ったら9が出やすいとか、そういうのを意識して。手のスピードは、何巡か損するかもしれないけど、先に打つことによって効果がある、と考えている。同じデジタルでも、村上淳みたいに門前しかやらない人もいれば……
- 来生
- 村上さんは面白いですよね。
- 野島
- 面白いです。
- 来生
- ため息がね(笑) いきなり風の東を切ったりするもんね。
- 梶本
- 彼も同じで、一本調子なんですよ。手が入らない時はズルズル負けちゃうんで。
- 来生
- 降りますよね、しっかり。
- 梶本
- 先手を取って、高い手が入らない時は負けちゃうんで、たまに変化をつけていこう、と。これで勝てなくなったら、そろそろ変化をつけていこうかな、と考えているみたいです。
- 来生
- 滝沢プロは、結婚されているんですか?
- 梶本
- していますよ。もう、6〜7年前かな。娘さんもいらっしゃって。
- 来生
- 佐々木さんも結婚していますよね。結構、既婚者が多いんですか?
- 梶本
- 多いですね。結婚をきっかけに辞めちゃう人もいますけど。40歳を超えて続ける人は、一気に減ります。
- 野島
- 食べていけないから?
- 梶本
- たぶん、そうです。環境的には良くなったんです。ゲームの仕事があったり、雀荘の仕事があったり、テレビも増えたので。ある程度、名前が出た人の環境は良くなったんですけど、それでもやっぱり「30代のようにはできない」というきっかけで辞めちゃう人がいる。
- 来生
- 土田浩翔さんは結婚している?
- 野島
- していないです。彼はできない(笑)
- 来生
- あの人も50代?
- 野島
- 50代半ばくらいじゃないですか。
- 梶本
- 馬場裕一さんと一緒ですから。
- 来生
- 馬場さんも独身?
- 梶本
- 結婚されています。長期間別居中ですけど(笑)
- 来生
- 梶本さんと馬場さんは……
- 梶本
- 所属は同じです。僕は博物館専従みたいになっていますけど。ほぼ派遣社員のようになっちゃったので。
- 来生
- 「THEわれめDEポン」の解説は、井出さんから梶本さんに代わったんですよね。もう10年くらいになりますか?
- 梶本
- CS放送になってからなので、5年くらいですね。
- 来生
- 井出さんの麻雀もすごい(笑)
- 梶本
- リーチをかけない。
- 野島
- 一昨年の最強戦は、本当にすごかったよね。
- 梶本
- そうですね。
- 小松
- リーチをかけないんですか?
- 来生
- そうね、ダマが多いよね。
- 野島
- 一昨年の最強戦では、「これでもかけないんだ」っていうぐらいかけないで、勝ちあがったんですよ。これがプロの価値だろうな、と、その時は思いました。
- 小松
- リーチをかけないっていうことは、振ってもらう確率が……
- 梶本
- 上がりますね。
- 来生
- でも、3人に自由にさせている場合もあるじゃないですか。その前にリーチをかけて、っていうのもありますよね。
- 梶本
- 一回、ヤミテンで高いところが決まると、相手もちょっと警戒したり、強い牌を受けてくれたりするんですけど、「ロン」って言って、2,000点だと、ちょっとホッとしちゃうんですよね。「リーチじゃなくてよかった」みたいな。そういうこともあるので、善し悪しです。「自分はそうやってやる」という意地を通すのもいいと思います。あまり宣言しちゃうと、自分の戦法をバラすようなものじゃないですか(笑) あまり得だとは思わないんですけど、観ている人は「すげー、そこまでやるんだ」っていう感じになりますから。
- 小松
- リーチをかけないと思われているわけで、もう7巡目あたりから、リーチをかけているのと同じくらいのテンションでやらないといけない。
- 野島
- 結局、そうなんですよ。ラベリング効果というか。
- 梶本
- 井出さんは、それを狙っていたと言っていましたね。「ヤミテンでも怖いんだよ」ということを見せたくて、そういう戦法をとったと。
- 来生
- ところで野島さんは、麻雀関係の取材が多いんじゃないですか?
- 野島
- お話はあるんですけど、会社として、「ニュースを読んでいる人間が麻雀に携わっているということを大っぴらにするな」という方向になっていて(笑) 1カ月くらい前も、読売新聞から「麻雀実況について」という取材の依頼が来たんですけど、お断りして。ニュースに関してだったら受けるんですけど(笑)
- 来生
- 中村アナウンサーも「THEわれめDEポン」の実況を担当していますけど、ちょっとぎこちないですよね。
- 野島
- 麻雀をやっている頻度が少ないんですよ、彼は。
- 来生
- 本当に、野島さんの実況は面白い。
- 野島
- ありがとうございます。
- 来生
- 梶本さんの解説も分かりやすくてね、好感を持てる。
- 梶本
- ありがとうございます。
- 来生
- ぜひ、今度、対局をお願いします。